【2008年6月27日(金)】奈良国宝の旅Vol.7
この円成寺に来た一番の目的は運慶作の大日如来を見ることだが、一番最後に取っておいた。
本堂の手前に、比較的新しい再建の多宝塔がある。その中に運慶25歳頃の最初期作品の大日如来坐像が安置されている。
多宝塔の前面にはガラスが嵌められているので、内部は見られるが、光線で光ってよく見ることが出来ない。そのために、手作りの箱眼鏡が用意されていて、潜望鏡を覗くようにして見ると内部がはっきりと分かる。塔の内部は鮮やかな彩色が施されている。その中央に小ぶりな大日如来が鎮座している。「うわーっ、密教している」と、みうらじゅんなら言いそうだ。
写真では何度も見たが、落ち着いた表情の中にも溌剌としたエネルギーの漲った躍動感が感じられる空気が漂っているように思われる。
大日如来は密教では宇宙の根源とされているが、この像はその宇宙を飲み込んでいくような力を内包しているようだ。それが智拳印に表われているのだろうか、図録の表紙にはクローズアップされている。
先日東京国立博物館で見た特別展示の運慶作と言われている大日如来と同じくらいの大きさでもあり、全体的な雰囲気は似ている。が、宝冠をはじめとした飾り多くある分派手な感じはする。
大仏師康慶実弟子運慶と、父であり師匠である康慶の実子であり直系の弟子であるという意味が込められた、若き運慶直筆の墨書銘の模写も展示されている。
これで運慶作と伝えられる仏像は、興福寺北円堂の諸仏を除いて全て見たことになった。北円堂の公開時期に合わせて奈良に来られるまで完全制覇はお預けとなる。