【2007年6月9日(土)】
JR東海の「うまし うるわし 奈良」キャンペーンが、東大寺、薬師寺、法隆寺に続いて興福寺になった。ビジュアルは阿修羅が主役となっている。
【うまし うるわし 奈良】
みうらじゅん氏が今回も興福寺を訪れて、「見仏記」と同様の現代的ではあるが造詣深い解説をキッチュにしてくれている。
国宝館に並ぶ仏像群の中でも阿修羅は別格だ。この美しさに魅せられ、昨年6月に奈良に旅行に行った際に、興福寺友の会に入会した。文化財保護のためというよりも在りし日の夏目雅子だからかも知れない。
通常は正面からしか見ることが出来ないが、映像は360度から展開されているので、裏面もよく分かる。それにしても不思議な造型だ。みうら氏は異形のようで異形ではないと言っているが、三面六臂は明らかに人間ではないが、自然に受け入れられてしまう不思議な雰囲気を持っている。
阿修羅は天界で娘をインドラにさらわれ、戦いを挑むが結局敗れ地上に来た際に釈迦の説法を聞いてから眷属になった。戦闘を好んだ面影はなくなり、仏法に従う面持ちが切なく哀しく表現されている一方で意思の強さも感じられる。
【阿修羅の秘密を読む】
「原寸大日本の仏像」の第1回も阿修羅が取り上げられている。正面とその左右の顔はそれぞれ一つの耳を共有しているが、左右二つの面の裏側では耳が各々についている、つまり3面でも耳は4つとなっていて少し変わった造りとなっている。
正面と左右の耳の共有がこの像を自然に見せているのではないかと「仏像の秘密を読む」には書かれている。
脱活乾漆像といういわば麻と漆で出来た張りぼての像は、制作行程が複雑で、しかも高価な漆を大量に使用した超豪華な像だ。空洞の像内には心木が入れられているが、この構造も特殊だという。
将軍満福という当代きっての名仏師がアトリエの弟子たちを何十人も使って制作した背景には、当時の藤原家の財政と信仰心を窺うことが出来る。
【Again】
キャンペーンテーマソング「Again」のCDは薬師寺の五重塔がアレンジされている。
繰り返し聞いていると悠久の時を超えて、往時の天平時代に舞い降りていくような気がする。