【2012年7月7日(土)】
燐光群の「梅ヶ丘BOX20周年記念フェスティバル・アトリエの会」の出し物は、「宇宙みそ汁」と「無秩序の小さな水のコメディー」。
燐光群の主宰者である坂手洋二氏は「初心に還って、アトリエの飾らない空間をそのままに、公演をさせていただくことになりました。極小の空間だからこそ、宝石のように磨きあげられればと思っています。」と純粋自主公演の抱負を語っている。
開場20分前、既に多くの人が集まって来ている。
10分前に入るとすでにほとんどの席が埋まりつつある。詰めに詰めて60席程度。開演前には満席になった。
【宇宙みそ汁】
刷り物に以下のことが書かれていた。
坂手氏が昨年の「三田文学新人賞」の審査員として候補作を読んでいる際に、戯曲部門ではなく、詩の部門で見つけた清中愛子作の「宇宙みそ汁」。新人賞奨励賞を受賞。
フツーの主婦が、「鶴見の京浜工業地帯をママチャリで必死に走る茶髪のギャルがいらたそれは私です。(中略)自己存在を問いながら社会から一番遠い場所で孤立して生きている多くの母親たちの姿は、みな私と同じです。(後略)」
あまり劇の内容を書くとまだ観られていない方に失礼になるので割愛するが、パンフレットにあるように、冒頭は、「地球に向かってただ一人 パラシュートで降り立っていく エプロン巻きつけ 私が降り立ったのは」から始まる、何とも表現のしようのない演出に驚く。
役者を近くで観られるので、彼らの目の表情、手や足の細かな動きが、観る者を惹きつける。
【無秩序な小さな水のコメディー】
こちらは、燐光群が今年5月にパリ郊外で上演した、「入り海のクジラ」、「利き水」に加えて、シンガポール会議で書き下ろされた「じらいくじら」の3本。
坂手氏の演劇のモチーフには度々くじらが登場するのはどうしてなんだろうか?
自分がクジラと言われたら、一番に想像して出てくるのはメルヴィル作の小説「白鯨(モビー・ディック)」だが、クジラを人間のように扱っているのが坂手氏の特徴であろうか?
こちらも内容については割愛。小劇場ならではの構成・演出には脱帽。
閉演後は、役者と観客が話し合っていたりするのも、大衆演劇とは違った光景か?
東京公演は7月20日まで。その後、盛岡、仙台、名古屋、大阪を回る。