【2011年5月4日(水・祝)】湖北・湖南・奈良古刹巡礼の旅#19
帯解寺から正暦寺参道に出て、菩提仙川という小川の橋を渡って福寿院の山門に着くと11時35分。約1時間10分の徒歩行程だった。
お堂に上がって、拝観受付をお願いすると、若い尼僧が対応してくれ、秘仏である薬師如来倚像が開扉されている部屋に案内していただいた。
すると、その部屋には、ご本尊の薬師如来倚像のほかに、後ろにも薬師如来、左右に日光・月光菩薩、大日如来、愛染明王などの平安期の仏像が中央の檀に祀らている。そのほかに左右のガラスケースの中にはおびただしい数の仏像や寺宝が安置されている。
薬師如来がこのように台座に腰掛けて踏割蓮華の上に足を下ろす倚像は極めて珍しい形式である。
白鳳期の特徴をよく表した仏像で、やはりその点では夢違観音に似ているところが大いにある。
「以前東京で御出張の際にも拝観したことがありますが、思ったよりかなり小さいのですね」と尼僧に問いかけると、「皆さん、そうおっしゃります」と言われた。
正暦寺の境内は見渡す限りがそうであり、かなり広大であるが、往時の面影はほとんどなく、興福寺の別格本山だったため、江戸時代には徳川家の経済封鎖によって1人の僧のみを残すだけとなってしまい、こうやって拝観していただけるようになったのも、この30年程度のことだ、とお話してくれた。
春の御開帳はこの部屋全体を開扉するが、秋は紅葉でかなり混雑するため、ご本尊だけを本堂に移されるという。
次に、客殿を拝観する。
テープでは孔雀明王のご真言が流されている。
中央には、これまた珍しい孔雀明王が祀られている。端正な面立ちで綺麗な宝冠を被られ、落ち着いた彩色で見事な羽根の広がりを持つ可愛らしい孔雀の背に載られた仏像である。明王と言っても、憤怒の形相ではない。
孔雀はコブラを倒す美しい鳥で、その素晴らしい力を持ち、毒をも食べてしまうことから、心の毒を取り除くことに由来して信仰の対象となったという。
孔雀明王の左右には愛染明王が安置されている。愛染明王は人形供養のご本尊ということで、多くの人形が持ち込まれてご供養されていた。
帰りがけに尼僧からご朱印をいただく。この尼僧の笑顔が気持ちよく、ここで修行していることを誇りにおもっているような感じがした。
(※仏像の画像は、購入した絵葉書より)