【2011年5月3日(火・祝)】湖北・湖南・奈良古刹巡礼の旅#4
渡岸寺観音堂(向源寺)の収蔵庫には、右手に胎蔵界大日如来坐像と厨子入りの十一面観音立像も安置されている。
大日如来は、檜寄木造で、像高148.5cm。たっぷりとした貫禄のある体躯ではあるが、繊細な薄衣を纏っており、膝上で法界定印を結んでいるお姿を見たとたんに、ハッとした森厳さを感じた。
全体的なバランスの良さ、流麗な衣紋は秀逸である。
十一面観音は、榧一木造で、像高39.1cmと小品ではあるが、檀像風の造りで、実に可愛らしい。
ふっくらとした面相、伏し目がちで穏やかな表情である。
渡岸寺は、寺伝によれば、天平8年聖武天皇が疱瘡が都に流行ったのを除災するために建立されたという。
往時は七堂伽藍を誇った大寺であったようであるが、兵火が堂宇を襲い悲惨な歴史を辿って来た。今は再建された観音堂が建立されている。
そのお堂の中には、たっぷりとした体躯で薄い衣を纏われ、落ち着いた顔立ちの平安時代作の阿弥陀如来坐像がお祀りされている。
渡岸寺観音堂(向源寺)というと、国宝の十一面観音だけだと思っていたが、本堂の阿弥陀如来も、収蔵庫の大日如来も十一面観音も素晴らしかった。
代々お守りいただいている方たちのご苦労があってこそ、この立派な諸仏が拝観できるのである。感謝の気持ちでいっぱいとなった。
(※仏像の写真は購入した図録より)