【2011年2月5日(土)】
東京国立博物館で行われている
特別展「仏教伝来の道 平山郁夫と文化財保護」 に行って来た。(会期:2011年1月18日(火)~2011年3月6日(日))
奈良薬師寺の玄奘三蔵院伽藍の大唐西域壁画殿の絵身舎利(壁画そのものを本尊としてお祀りすること)である平山郁夫画伯が描かれた「大唐西域壁画」全てが、初めて寺外で公開される。
これまで薬師寺で2度ほど拝観したことがある(昨年は平城遷都1300年祭で1年中公開されていたが、普段は時期が限定されている)が、壁画殿で拝観した時の圧倒的な迫力、玄奘三蔵の求法の旅の見事な再現が印象に残っている。
今回、「明けゆく長安の大雁塔」、「嘉峪関を行く」、「高昌故城」、「西方淨土須弥山」、「バーミアン石窟」、「デカン高原の夕べ」、「ナーランダの月」の7場面13幅の壁画を観ていると、玄奘三蔵法師の3年に亘る旅の軌跡が偲ばれると共に、実際に今自分がその場所に佇んでこれらの風景を見ているような疑似体験に陥った。
実に感動的であった。
東博での展示は、薬師寺のように13幅全てが一堂にあるものではなく、順番に並んではいるが全てを見渡せるものではなかったが、照明のよさと間近に観られる点では優れていた。
だが、今回の展示内容は、それだけではなく、更に充実していた。「平山郁夫と文化財保護」とタイトルが付けられているように、画伯の文化財保護(特にアフガニスタンの仏教遺跡に関して)の深い思いと行動力を、改めて知ることができた点で、鑑賞して良かったと思う。
「序章 平山郁夫 取材の軌跡」では、氏の取材活動の精力的で広範囲なことが、スケッチを通して良く分かった。
「第1章 インド・パキスタン―マトゥラー・ガンダーラ」、「第2章 アフガニスタン―バーミヤン」、「第3章 中国―西域」、「第4章 中国―敦煌」、「第5章 中国―西安・洛陽・大同」、「第6章 カンボジア―アンコールワット」では、各地からの貴重な石仏や壁画、装飾品などが展示されていて、時間が立つのも忘れるほどに魅入られてしまった。
特に、画伯が文化財保護に尽力して創られた
「平山郁夫シルクロード美術館」からの作品は、仏教伝道の道が如何に人びとの信仰から造られたか、信仰の強さ、仏教美術の技術の高さが伝わって来た。
タリバン政権によって破壊されたバーミヤンの大仏は、2000年12月31日に薬師寺に「大唐西域壁画」が奉納された3ヶ月後であった。