【2010年10月14日(木)】平城遷都1300年祭の旅-秋篇Vol.4
昨年12月に訪問した際には、解体修理の調査のために覆いで覆われていた東塔だが、今は(今月一杯まで)覆いも外されて、解体修理前の雄姿を見せてくれている。
この期間は特別に諸層内陣を拝観させてくれている。塔の東側からアプローチして、西面の扉が開いており、そこから中央の心柱や、それを囲むように配置されている柱群がよく見えるようになっている。また、天井が見やすいように、扉の内側に大きな鏡を置いて、天井画を映し出している。天井も柱もわずかばかりだが、絵模様の彩色が残っている。だが、剥落が激しくてなかなか原型を想起するまでには至らず、往時の鮮やかな文様は判別できない。
更に展示されているパネルの解説によると、遠目で見ればなんともない高欄や大斗などの軒を支える組物もゆがんだりしているようで、随分と痛々しい姿のようだ。
1200年余に亘り風雪に耐えてよく創建当初の姿で、その優雅な姿を見せてきてくれたものであると感心する。人間で言えば、身体のあちこちに痛みが来ているのと同様に、この塔にも隠れた傷みが何箇所もあるようなので、解体修理は人間ドックに入って分かった病気を根本から治療するようなものなのであろう。
フェノロサが“凍れる音楽”と称したこの東塔も、あと10年は見られなくなってしまうわけで残念ではあるが、一刻も早く傷んだ箇所の修復を終えて、健康体になって再びその雄姿を現してもらいたいと願う。