【2010 年5月2日(日)】平城遷都1300年祭の旅-春篇Vol.37
談山神社から11時12分発ののバスに乗って、山間の道を下る。のんびりした光景が周囲に広がっている。十分ほどで聖林寺前に着く。が、前といってもここから寺院までは歩いて数分掛かる。
聖林寺は丘の上の小さいお寺である。が、そこからの眺望は素晴らしく、思わず足を止めて遥かを見渡して一息つくことになる。
聖林寺の本尊は塑像の地蔵菩薩坐像である。天井を突き抜けんばかりの大きなお体であるが、お顔はいたって温和である。
その本堂に向かって左上の収蔵庫に、かつて大御輪寺(大神神社の神宮寺)より移され、フェノロサ、岡倉天心によって開扉された国宝十一面観音菩薩が安置されている。
2年前に訪問したときはガラスケースに外光が反射して見にくかったが、今回はお堂の扉が閉まっており(来る人がその度に閉めてもいる)、その分
外光に邪魔されずに、天平時代の木心乾漆像の傑作である十一面観音立像をじっくりと拝観できた。ここを訪れる方がたは仏像ファンに違いなく、マナーをよく守られている。
均整のとれたお体に男性的な凛々しい尊顔がダンディズムを感じさせる。また流れるような衣文や指先の曲がり方などは非常に繊細な感じでもあり、力強さと優美さを兼ね備えている仏像である。
金箔が剥がれて痛々しく見える部分もあるが、時空を超えて睥睨するような眼差しも印象に残る。