【2009年5月29日(金)】
何年前だろうか?まだバブル経済だったニューヨークに出張した時に、「Blue Note」に連れて行ってもらった。街のはずれに佇んでいたジャズクラブの中は狭く、立錐の余地もないほど人で溢れ、スイングが充満し、アルコールとタバコと体臭とが渦巻く空気の中で、ドラムやピアノやベースの繊細な音色とボーカルの絞り出す擦れた声が、更に酔いを助長して、初めて眼にするシーンがいつしか郷愁の一場面になったような記憶がある。
それ以来、東京に「Blue Note」が出来ても行ったことがなかった。
チケットが入手できたので、20時半過ぎに扉の奥に入ると、あの時とは全く異なる世界が展開していた。ロビーでセカンドステージの案内を待つ大人たちは、ニューヨークで見かけた人種とは違っていた。パリの観光客相手の高級クラブ「リド」に集う人たちのようだった。
“ニューヨークのため息”と言われるHELEN MERRILL。ハスキーボイスはジャズという一ジャンルを超えて、心に響く。「MY FUNNY VALENTINE」や「MY FAVORITE THINGS」など15曲ほどのステージは、仕事の忙しさを忘れ楽しませてくれた。