【2008年12月30日(火)】ゆったりの京師走Vol.15
宸殿から靴を履いて庭に下りる。苔で覆われた庭に立つ木々の向こうに往生極楽院が垣間見れる。ガイドブックなどによく載っているアングルだが、こちらからは堂宇の裏側を見ることになるので、庭を巡ってお堂の正面に回る。薄暗い堂内に阿弥陀三尊像が窺い知れる。
極楽院の中に上がって、ゆっくりじっくりと三尊像を拝観する。想像よりも三体とも大きく、表面の金色がよく残っている。特に脇侍の勢至菩薩と観音菩薩が大きく感じられた。三体とも実に落ち着いて温和な表情である。
中尊の阿弥陀如来は来迎院を結び、向って左の勢至菩薩は合掌し、右の観音菩薩は蓮華台を掌にしている。脇侍の菩薩はいわゆる大和座りというやや前屈みに跪いている。その姿勢が動を表していて、永遠の瞬間を切り取っているようだ。
よく見ると、勢至菩薩の頭上に何か注射器のようなものが刺さっているではないか?ご朱印を頂きに傍に座る僧侶のもとへ伺ったときに、「勢至菩薩の髻の前にあるものは何ですか」と訊いてみた。すると「宝瓶とか水瓶とかと言われいて、勢至菩薩の知恵をイメージしています」と教えていただいた。観音菩薩が慈悲を、勢至菩薩が知恵を授けてくれるというのは知っていたし、観音菩薩が蓮台を持っているのは見たことがあったが、知恵をイメージして頭上に知恵の塊を誂えたとは知らなかった。感心して更に、「大和座りって思ったより両膝を開いているのですね?」とも言と、「これはこれから立って衆生の元へ迎えに行くとも、今極楽浄土に着いたとも捉えることが出来るのですよ」とも教わることが出来た。
皆、大原に来ること自体が目的なようだが、今回はこの三尊像を拝観することが目的なのだ。
話し好きの僧侶の解説はどんどんと加速する。後ろにご朱印待ちの人が居るのではないかと気になっていたので、船底天井の彩色のことは聞かずにいると、妻が「天井に彩色が残っていますね」と言う。すると、懐中電灯を持ち出し、天井を照らし出してくれ、「当時は極彩色の美しい絵が描かれていたようです。舟底天井と言って船の底のようにな形になっていて、そこに菩薩がたくさん描かれています。少し現在も残っているのが見えるでしょう。復元したものが展示室になるので、帰りにご覧ください」と丁寧に教えてくれた。
辺りには、大原にやって来た人たちが物珍しそうに佇んでいた。そうなのだ、みな大原に来るのが目的で、この仏像を拝観することは二の次なのだ。だが、こちらは満足だ。
そして、三千院のスタンプラリーは全てクリアした。
金色不動堂、観音堂を参拝した後に、復元された船底天井を見た。一面青色の天井に菩薩たちが極彩色で鮮やかに描かれていた。先ほど拝観した往生極楽院の創建当初はこうだったのかと、改めて阿弥陀信仰の強さを思い知った。