【2008年6月29日(日)】奈良国宝の旅Vol.36
大仏殿の西の回廊の端の拝観出口を出た左手に鐘楼への坂道が続いている。何組かの観光客が鐘楼を通って階段を上っていく。
東大寺の最大の見学先は大仏殿と南大門、そして余裕があればお水取りで有名な二月堂となるのだろう。
階段を登った正面は三月堂(法華堂)だ。我々の最大の目的は、初日に行った戒壇堂とこの法華堂だ。この何組かの観光客が一斉に法華堂に入っていったら、混雑して厭だなと思う反面、まぁ行かないだろうなぁとも思っていたところ、案の定、前を行く団体観光客は法華堂の外観も気にせず、左に聳える二月堂の方に向かっていった。
前回来た時も法華堂の入り口の前にこの(?)鹿が居て撮影したので、今回は「やぁ、また」と声を掛けた。法華堂の守り鹿かも知れない。
法華堂の礼拝堂にはじっくりと観賞できるようにか、腰を下ろして(あるいは寝っ転がって)見ることの出来るスペースがある。そこに腰掛けて、16体の仏像群を眺める。後方の秘仏である厨子に入った執金剛神は見られないが、
本尊の不空羂索観音立像をはじめとする15体の仏像群は、まさに一大ドラマか歌舞伎の1シーンを見ているような感じだ。パンフレットには、「これら仏像のかもし出す雰囲気は、観る人をしばし厳かな「ほとけたちの世界」にいざなう。」と書かれている。まさにその通りだ。何しろ役者が揃いすぎている。天平時代の乾漆像が9体、塑像が5体、鎌倉時代の木造が2体、そのうち国宝は12体、残りの4体も重文だ。これを見ずして東大寺に行ったと言ってはならない。当時の東大寺の圧倒的な権力と財力が誇示されている。特に本尊の宝冠はパリの高級宝飾店が足元にも及ばない豪華絢爛さだ。
不空羂索観音の掌には水晶が守られている。手を合わせるというのは、両手の平をぴったりと隙間なく合わせるのではなく、蓮の蕾の膨らみのように、小さな卵(ここでは水晶)を大事に包むように合わせるのが、本当の合掌ということらしい。
家族連れで来ていた小学生の子供たち二人は、父親の適切な解説に熱心に耳を傾け、合掌する観音の水晶を見つけては合掌していた。