【2012年5月4日(金・祝)】湖北・奈良・京都古刹巡りの旅#27
飛鳥園で疲れを取った後、目の前の奈良国立博物館へ。
この特別展は、東京国立博物館友の会のチケットで入ることが出来る。
現在、清泉ラファエル・アカデミアで講座をとっている「仏教彫刻の歴史をめぐる」の金沢文庫の学芸員の講師から「解脱上人 貞慶」について習ったこともあり、今回来ることになった。
今年は解脱上人貞慶の800年御忌にあたり、鎌倉時代の前期に活躍した上人の功績を辿る展示会である。
貞慶は興福寺で学んだ後に笠置寺へ、そして海住山寺へと移り、由緒ある寺々の復興や仏教の再生に大きな役割を果たした上人で、決して慶派の仏師の1人ではない。
妻はチラシにある「ストイックでアクティブ!」というコピーに、「???、コピーライターも大変ね」と言っていたが、きっと上人の人生を表現したかったのだろう。
貞慶の思想は、仏教の原点である釈迦への信仰に基づき、弥勒仏、観音菩薩、春日大社の神への信仰が深く、法相宗の唯識を重んじたので「ストイック」であり、数々の寺院の復興に尽力したことで「アクティブ」としたのだろう。
貞慶は南都復興の勧進に尽力し、重源とは親しかったが、法然は批判し、実は法然を島流しにした面もある。
ということで、先程東大寺の指図堂での法然像を想起し、仏教界にも色々と抗争があった事実を教科書でなく知ることになった。
下の写真の一番右は、貞慶の念持仏で、檀像風の彫刻は実に見事である。
重源の臨終仏で1203年に快慶が造った阿弥陀如来は端正でスッキリ感がある逸作であった。
また、法相宗系図には無著・世親の名があり、午前中に興福寺北円堂で拝観した像が思い出された。
他にも見応えのある仏像や書画が展示されていた。
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新館から地下の廊下を通って旧館の「なら仏像館」へ。
(「なら仏像館」の地上の入口はこちら↓)
入るや否や、興奮の坩堝。
先ず、久しぶりにお会いできた元興寺の薬師如来。平安時代初期の代表作で、肩幅が広く力強い体躯に流れる翻波式衣文の見事さ。
他にも沢山の素晴らしい仏像が展示されているが、この日の最大の興奮は2つ。
最初は、兵庫の浄土寺の阿弥陀如来立像。
1201年の快慶の傑作の一つ。像高高く引き締まった体躯にややふっくらとした頬に穏やかな目。漆箔金箔。光背には阿弥陀坐像が配され、頭部後ろからは放射線状に光の煌めきが表されている。
いつかは、浄土寺を訪問して、日没前の陽の光を背景にして輝く西方極楽浄土の阿弥陀如来三尊像を拝したい。
そして、2つ目は、初めての大阪の金剛寺(真言宗御室派)の降三世明王坐像。
1234年作の木造彩色。
像高3mの中尊である大日如来の脇侍(もう一方は不動明王)ということで、この三尊が修理されていて、最初にこの降三世明王の修理が終わったとのことで、特別展示されていた。
火焔光背の前に二重円光背。右に顔を向け、目を丸く見開き、口で威嚇する表情。右手に五鈷杵を持つ。
顔も体も深緑色である。
全体的な威圧感が凄く、生き生きとして躍動感に溢れている。
と、メモを見ながら書いているが、修理が終わりお寺に戻ったら是非とも訪問したい思いが募って来た。
これにて、この日の行程は終了。
18時少し前に奈良博を出て、夕食へ。