【2011年5月3日(火・祝)】湖北・湖南・奈良古刹巡礼の旅#12
今回の湖北巡りでお世話になった地元の観光タクシー伊香交通さんに、事前にメールで拝観したいお寺のリストを送っていたところ、一つのお寺が拝観出来ないと回答が帰ってきた。
時間的にはもう一箇所加えることが出来るが、どこか希望があるか訊ねられた。
と言ってもあまり遠くには行けないし、詳しいことが分からないので、送っていただいたパンフレットに掲載されていた観音様があまりにも素晴らしかったので、その「観音寺」を指定すると、「どちらの観音寺ですか?」との返答。
そういえば、この一帯には観音様をお祀りしている観音寺が沢山あるのだろう。どちらの観音寺か分からなかったので、「パンフレットのここ」とメールすると、そこは「黒田観音寺」と言われるお堂であったようで、コースに組み込んでもらえた。
己高閣・世代閣からは車で10分程度か?北陸本線を渡って琵琶湖側の田園の中を走ると、右手奥にそれらしき瓦屋根が見えてきた。
お堂の中に入ると、世話役のおばさんがぽつりと入口近くに座られていた。
その中央の厨子の中には立派な観音様が立っておられる。「うわぁ~」と溜息が出てしまった。
厨子内に灯りが灯されると、そのユニークな観音様の全容が分かってくる。
平安時代中期の作と伝えられる、千手観音あるいは准胝観音で、上半身が太く逞しい割には下半身はスラリとして薄い衣を纏っている。檜の一木造りで、199cmの像高、蓮台を入れると3mとかなり大きい。
目尻がややつりあがっている眼、豊満なお顔立ちで厳かな表情をしている。宝冠も耳飾も美しい。
だが、なんと言っても一番ユニークなところは、両腕である。左右に各9つ合せて18ある御手は、それぞれ持物をお持ちになり、まるで動きだしそうな気配を漂わせている。
おばさんの計らいで、灯りを消したり点けたりすると、お顔の表情の変わり方がはっきりする。
暗くなると、眼がこちらを向かれて慈悲の面相になりやさしさが表れる。
おばさんのお話では、この村の17軒の内の15軒で、3軒が3年交代でお堂のお世話をしているという。
お堂の管理のほかにも自治会の役割が廻ってくるので、何らかのことをしているという。
村の人たちのお世話によってこの円満な観音様を拝することが出来ることを有難く思った。
「どちらからです?」と尋ねられたので、「東京からです」と応えると、「地震大丈夫でしたか?私はちょうど9日10日と伊豆に行っていたのだけれど、11日はこちらに帰って来ていて恐い目には遭わずに済んだ。だけど、大変なことですね」と語っていた。
最後にご朱印と写真を購入して、堂内を見回すと、厨子の左下に3体の破損仏が安置されていた。
正式には「霊応山観音寺」と称されるらしい。
(※仏像の画像は、購入した写真より)